S&P500とSCHDは、多くの投資家に人気のある投資商品です。
S&P500はアメリカを代表する500銘柄に広く分散投資し、長期的な資産成長を目指すのに最適です。
一方で、SCHDは高配当株を中心に構成され、安定したインカム収入を提供することを目標としています。
では、この2つを「両方に投資」することで、どのようなリターンとセクター分散の効果を得られるのでしょうか?
この記事では、S&P500とSCHDを併用するメリットとデメリットを、具体的なデータを用いて検証します。
資産成長と安定収入のバランスを取りたい投資家にとって、ヒントとなる内容をお届けします。
リターンの検証
2015年1月から2024年12月末までの期間(約10年)でバックテストを行い、リターンを検証してみましょう。
リターンの検証のため、バックテストをPortfolio Visualizerで実施しました。
この分析は過去のデータに基づいており、将来のパフォーマンスを保証するものではありません。
バックテスト結果
- 積立金額 毎月約5万円 (333ドル 1ドル=150円で換算)
S&P500とSCHD同額投資の場合は、2.5万円ずつ投資 - 分配金は再投資
- バックテストはPortfolio Visualizerで実施
S&P500とSCHDに同額投資した時の最終評価額は、SCHDを上回り、S&P500を下回る結果となりました。
次に最終評価額、Best Year、Worst Year、Sharpe Ratioの比較です。
に同額投資 | S&P500とSCHDS&P500 | SCHD | |
最終評価額 | 11,909,850円 ($79,399) | 12,885,000円 ($85,900) | 10,928,400円 ($72,856) |
Best Year | 29.29% | 31.22% | 29.87% |
Worst Year | -10.87% | -18.17% | -5.56% |
Sharpe Ratio | 0.72 | 0.76 | 0.65 |
Sharpe Ratio(シャープレシオ)は、投資のリスクに対してどれだけ効率的にリターンを得ているかを測る指標です。
数値が高いほど、リスクに見合ったリターンが得られていることを意味します。
バックテスト結果からわかること
最終評価額の比較
S&P500とSCHDを同額で投資することで、リスクをある程度抑えつつ、比較的高い評価額を得られる可能性が示されています。
リスクとリターンのバランス
同額投資では、Sharpe RatioはS&P500にわずかに劣るものの、SCHDを上回っています。
これにより、S&P500に比べてリスクを抑えつつ、SCHDよりも効率的なリターンを得られる可能性が示されています。
最良・最悪の年の比較
S&P500は好調な市場で高いリターンを期待できる一方で、SCHDは下落局面でのリスク軽減に寄与することが分かります。
同額投資では、それぞれの特性をバランス良く活用できることが示されています。
セクター分散のバランスの検証
S&P500、SCHD、そして両者に半分ずつ投資した場合のセクター比率を順に見ていきましょう。
それぞれの特徴を知ることで、分散効果やバランスの違いがより明確になります。
S&P500のセクター比率
S&P500のセクター比率は「情報技術」が31.3%と最も高く、次いで「金融」(13.9%)や「一般消費財サービス」(10.7%)が続きます。
これにより、S&P500は成長分野を中心にしつつ、さまざまなセクターに分散投資していることが特徴です。
SCHDのセクター比率
SCHDのセクター比率は、「金融」(20.1%)や「ヘルスケア」(14.7%)が高く、安定したキャッシュフローを持つ企業が中心です。
また、「生活必需品」や「資本財・サービス」も大きな割合を占めています。
情報技術やコミュニケーションサービスへの比重は低めですが、高配当株に特化した構成が特徴です。
S&P500とSCHDに半分ずつ投資
情報技術が20%と大きな割合を占めている一方で、S&P500のセクター比率に比べると、情報技術の比率は減少しています。
金融セクターも17%と大きな比重を持っていますが、全体の構成はより均衡の取れたものとなっています。
S&P500とSCHDに半分ずつ投資することで、成長ポテンシャルと安定した配当収入を得ながら、リスクを分散したバランスの取れたポートフォリオを目指すことができます。
S&P500とSCHDで重複する銘柄は?
重複する銘柄を調査した結果、42銘柄が見つかりました。
興味のある方は、以下にその銘柄を記載していますので、ぜひご覧ください。
S&P500とSCHDに重複して含まれる銘柄
赤字はSCHDのポートフォーリオ Top10の企業(2024年12月24日時点)
- アッヴィ
- アメリカン・アメニティ・コーポレーション
- アムジェン
- アパ
- ベスト・バイ
- ブリストル・マイヤーズ
- CFインダストリーズ
- チャロット・レジャー・ワールドワイド
- シンフォニア・ファイナンシャル
- シスコシステムズ
- シェブロン
- ダーディ・レストランツ
- イーオージー・リソーシズ
- フォード
- ファースト・オート・パーツ
- フィフス・サード・バンコープ
- ハンコック・バンコープ
- ホーム・デポ
- ハーシー
- インターパブリック・グループ
- キーコーポレーション
- キンバリー・クラーク
- コカ・コーラ
- ロッキード・マーチン
- リバティ・エンタープライズ
- アルトリア
- マウンテン・バンク
- オクタ・カンパニー
- ペイチェックス
- ペプシコ
- ファイザー
- パッケージング・コーポレーション・アメリカ
- レジナル・ファイナンシャル
- スナップオン
- スカイワークス・ソリューションズ
- ティファニー
- ティ・ロウ・プライス
- テキサス・インスツルメンツ
- ユナイテッド・パーセル・サービス
- ユニオン・バンコープ
- バロンズ・インダストリーズ
- ベライゾン
S&P500とSCHDを組み合わせて投資する際、分散効果を高めるためには、重複する銘柄が少ない方が理想的だと考えられます。
しかし、SCHDのポートフォリオにおいてTop10企業が全体の約4割を占めており、その全てがS&P500にも含まれています。
このような銘柄の重複は、むしろ有利に働く場合があります。
なぜなら、S&P500に含まれる企業は、米国経済を代表する大手企業が多く、安定した成長を見込めます。
また、SCHDにおけるTop10企業は、配当金を重視した安定したビジネスモデルを持つ企業です。
これらの企業が重複していることは、配当収入と成長の両方を期待できるため、投資家にとってはリスク分散が進み、安定性が増すというメリットがあります。
つまり、S&P500とSCHDを組み合わせることで、重複する銘柄が安定性と収益性の向上に寄与し、バランスの取れたポートフォリオを構築することができると言えるでしょう。
私はS&P500とSCHDにそれぞれ半分ずつ積立投資をしています。
S&P500とSCHDを併用するメリットとデメリット
リターンとセクター分散のバランスの検証結果から、S&P500とSCHDを併用するメリットとデメリットを示します。
メリット
リスクの分散
S&P500は成長株を中心に投資し、安定したリターンを期待できる一方で、SCHDは高配当株に特化しています。
両者を併用することで、リスクを抑えつつ安定した収益を得る可能性があります。
安定したキャッシュフローの確保
SCHDは高配当株に投資しており、定期的な配当金収入を得やすく、投資家にとって安定したキャッシュフローを提供します。
S&P500と組み合わせることで、成長と安定性をバランスよく取り入れることができます。
重複銘柄による安定性向上
S&P500とSCHDには42銘柄が重複しています。
これらの企業は米国経済を代表する安定した企業であるため、重複銘柄が安定性を向上させ、ポートフォリオ全体のリスクが低減します。
デメリット
重複する銘柄の多さ
両者に42銘柄が重複しており、セクター分散の効果を最大化するためには、これらの銘柄が全体のポートフォリオに占める割合が高くなる可能性があります。
このため、過剰な重複が分散効果を減らす場合があります。
リターンの制限
S&P500は成長株に多く投資しており、市場が好調な場合は大きなリターンが期待できます。
一方で、SCHDは安定した配当を重視しているため、リターンの面ではS&P500に比べて劣る可能性があります。
両者を組み合わせることで、成長のリターンが制限されるかもしれません。
まとめ
S&P500とSCHDに同額投資することで、成長性と安定性を兼ね備えたバランスの取れたポートフォリオを構築できます。
S&P500は市場全体の成長を反映し、SCHDは高配当企業に投資することで安定した収入を得られます。
バックテストでの最終評価額は、SCHDを上回り、S&P500を下回る結果となり、リスクを抑えつつ効率的なリターンを実現できることが分かりました。
また、セクター分散も考慮され、リスク分散の効果が確認されました。
重複する銘柄も安定性向上に寄与するため、両者の組み合わせは投資家にとって有益な戦略の一つと言えるでしょう。