歯科での不正請求を指摘して返金された話。まさかの“出禁”!?

歯の健康を保つために、定期的に歯科でクリーニングを受けている方は多いと思います。

私もその一人でした。ところが、ある日ふと診療明細書を見て違和感を覚えたことから、思いがけない事実に気づきました。

「これ、受けた覚えのない処置なのに…?」
何気なく受け取っていた明細の中に、私が受けていないはずの“歯科衛生実地指導料1”や“歯科疾患管理料”が記載されていたのです。

本記事では、私が実際に体験した歯科での疑問、そこからどう対応し、何を学んだかをお伝えします。

診療明細書をチェックする大切さ、そして受診する側としての小さな注意が、不当な請求を防ぐ手がかりになることを、少しでも多くの方に知っていただけたらと思います。

診療明細書(下の歯のクリーニング時)

下の歯のクリーニングをして貰った時の診療明細書

診療明細書(上の歯のクリーニング時)

上の歯のクリーニングをして貰った時の診療明細書

目次

歯科衛生実地指導料1の不正請求

厚生労働省のホームページに掲載されている「別表第二 歯科診療報酬点数表」によると、「歯科衛生実地指導料1」の算定要件は以下のように記載されています。

歯科衛生実地指導料1
歯科疾患に罹患している患者に対して、主治の歯科医師の指示 を受けた歯科衛生士が、直接15分以上の実地指導を行った上で、当該指導内容に係る情報を文書により提供した場合に、月1回に限り算定する。

歯のクリーニングは通常、歯科衛生士さんが対応してくださいます。
しかし私の場合、15分以上にわたる指導は受けておらず、指導内容を記載した文書も渡されていませんでした。

にもかかわらず、診療明細書には「歯科衛生実地指導料1」が記載されていたため、不審に思い、歯科医院に電話で確認することにしました。

電話でのやりとり

私:診療明細書に「歯科衛生実地指導料1」が含まれていましたが、15分以上の指導を受けた覚えがなく、文書  も受け取っていません。
この料金が請求されている理由について教えていただけますか?

歯科医:歯のクリーニング中のやりとりや、歯科衛生士と歯科医師の対応を合わせた時間をもとに算定しています。

私:それって、歯科診療報酬点数表の算定基準には反していませんか?
   また、指導内容を記載した文書も受け取っていません。

歯科医:歯科衛生実地指導料1の点数については、患者さまには暗黙の了解でいただいているものです。
    文書はお渡しすることはできます。

私:歯科診療報酬点数表の算定要件に沿って、適切に対応していただけますか?
  指導をしていないのに、指導内容の記録や文書を作成することはできないですよね?

歯科医:それでは、わかりました。返金できるか、理事長に確認して、折り返しご連絡いたします。

私:今回の分だけでなく、過去の分についても遡って返金していただけるよう、よろしくお願いします。

歯科医:過去の分の返金についても理事長に確認いたします。


折り返し、電話があり返金して頂けることになりました。

歯科疾患管理料の不正請求

電話を終えた後、他に不正請求されている項目がないかと診療明細書を再度確認したところ、「歯科疾患管理料」も請求されていることが分かりました。

この件は、「歯科衛生実地指導料1」の返金を受け取る際に、歯科医に確認することにしました。

厚生労働省のホームページに掲載されている「別表第二 歯科診療報酬点数表」によると、「歯科疾患管理料」の算定要件は以下のように記載されています。

歯科疾患管理料
注1 1回目の歯科疾患管理料は、歯科疾患の管理が必要な患者に対し、当該患者又 はその家族等(以下この部において「患者等」という。)の同意を得て管理計画 を作成し、その内容について説明を行った場合に算定する。なお、初診日の属する月に算定する場合は、所定点数の100分の80に相当する点数により算定する。

2 2回目以降の歯科疾患管理料は、1回目の歯科疾患管理料を算定した患者に対 して、注1の規定による管理計画に基づく継続的な管理を行っている場合であっ て、歯科疾患の管理及び療養上必要な指導を行ったときに、1回目の歯科疾患管理料を算定した日の属する月の翌月以降月1回に限り算定する。

歯科医院でのやりとり

私:診療明細書に「歯科疾患管理料」が含まれていましたが、管理計画に同意した覚えはありませんし、内容の説明も受けていません。この料金が請求されているのは、なぜでしょうか?

歯科医:当院では、管理が必要な患者さんには一律でいただいておりますので、すべての患者さまに算定しております。

私:ですが、厚生労働省が定める「歯科診療報酬点数表」には、そのように「すべての患者から一律に算定できる」といった記載は見当たりません。
もしそのような記載があるのであれば、具体的にどの資料のどこに書かれているのか、教えていただけますか?

歯科医:わかりました。「歯科疾患管理料」についても返金させて頂きます。

以上のやりとりで、歯科疾患管理料についても返金してもらいました。

返金の明細書

歯科衛生実施指導料1の返戻金として、1,680円が戻ってきました。

ところが、「過去の歯科初診料が未収金であった」との理由で600円が差し引かれ、実際に返金されたのは1,080円でした。

しかし、自宅で診療明細を改めて確認したところ、5月下旬の歯科初診料はすでに請求・支払い済みでした。

つまり、この600円の差し引きには明らかに誤りがあります。

さらに、267点に対して600円という金額設定も、点数換算として整合性が取れていません。

正直なところ、あまりにもずさんな対応に驚いています。

医療機関として、もっと正確で誠実な対応をしていただきたいと強く感じました。

歯科衛生実地指導料1の返戻金の明細書

歯科衛生実施指導料1の返金の明細書

歯科疾患管理料の返戻金として、1,900円が戻ってきました。

歯科疾患管理料の返戻金の明細書

歯科疾患管理料の返金の明細書

返金対応の末に告げられた“出禁”

この後、歯科医から「出禁にします。また、何かご縁がありましたらよろしくお願いします」と一方的に告げられました。

もちろん、こちらとしては今回のような不正請求を行う歯科医院に今後も通院するつもりはなかったため、あえて出禁の理由までは尋ねませんでした。

しかし、こちらは診療明細を確認し、不明な点について正当な質問と申し出をしただけです。
それにも関わらず、理不尽な対応をされたことに対しては、非常に憤りを感じています。

おそらく、私を出禁にしたのは、不正請求の実態が他の患者にも知られることを恐れたためではないかと推察しています。

その7割、みんなの保険料です

医療費の自己負担は3割ですが、残りの7割は私たちみんなが支払っている保険料などから拠出されています。

つまり、不正請求によって余分な診療報酬が歯科医に支払われているということは、私たち全員の大切な保険財源が不当に使われているということになります。

一人ひとりの請求額は小さくても、積み重なれば社会全体にとって大きな損失です。

そう思うと、ただ「自分の問題」ではなく、「みんなの問題」として捉えたときに、より強い憤りと、声を上げる必要性を感じました。

今回の不正請求の件は、厚生局 指導課への通報も検討したいと思います。

不正請求の指摘をして学んだこと

今回、診療明細書の確認をきっかけに、実施されていない指導料や管理料が請求されていたことが分かりました。以下のことを通じて、改めて「患者としての目線」の大切さを実感しました。

診療明細書は必ずもらい、内容を確認することの重要性

何気なく受け取ることの多い診療明細書ですが、「何が、どのように請求されているのか」を知ることは、患者の権利でもあり、義務でもあります。
少しでも違和感があれば、遠慮せずに確認することが大切です。

点数がついている項目には、必ず算定基準がある

たとえば「歯科衛生実地指導料1」や「歯科疾患管理料」は、実施内容や条件が明確に定められており、形式的に請求できるものではありません。
自分が本当にその内容を受けたかどうか、冷静に振り返ってみることが必要です。

不正を見過ごさないことも、医療を守る一歩になる

医療機関とのやりとりは気が重いこともありますが、「おかしい」と思ったら、確認・指摘することも、健全な医療環境を守るために必要な行動です。

一度でも違和感を覚えたら、通院先を見直すのも選択肢

返金に応じてくれたとしても、説明の不十分さや対応の不誠実さが続くのであれば、無理に通い続ける必要はありません。
自分が安心して通える歯科医院を選ぶことが、最も大切です。

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